筆者を中心に、「ハーフマラソンまでは何とか自分の走りができる」という方も多いでしょう。
そこで注目されたのが、スズキ浜松アスリートクラブの安藤選手と清田選手の「忍者走り」です。
そもそもこの「高速ピッチ走法」はフルマラソンを走る上で「省エネ走法」として昔から話題にはなっていましたが、今、「忍者走り」が話題になっている理由は「ランナーのスピード高速化」にあります。
◆高速化するランナーと故障率の因果関係
筆者はそれほどの走力がないので自信を持っては言えませんが、間違いなく、周囲のランナーは「高速化」が著しいです。
長距離では短いとされる「3kmマラソン」では9分台で走る市民ランナーも珍しくなく、5kmは19分を切っていて当たり前。
10kmマラソンでは34分~36分がもはや“努力すれば叶うレベル”とまでなっている風潮があります。
各々のランナーの高速化が意味することはもちろん、マラソンタイムのインフレ化です。特に競争心が強いランナーにとっては、マラソンタイムが走ることのモチベーションであるという方は少なくないでしょう。
そこで問題になっているのが、「故障率の上昇」です。ビギナーランナーはもちろん、シリアスランナーが必ず“どこかが痛い”ということは、多くのランナーが抱える悩みです。
そして多くのランナーがもれなく“痛みを抱えつつ走っている”という状態でしょう。
高速化するランナーとして多い故障は“走りすぎ”によるものですが、そもそもこの「高速化」自体が、フルマラソンでの走り方に対して「疑問」を抱えるランナーが増えています。
◆高速化に対する意識が強くてフルマラソンに対応できない
ハーフマラソンまでは、脚の着地衝撃による失速は数少ないものです。
ただ、フルマラソンともなると「30kmの壁」や「35kmの壁」にぶち当たるものです。そこにジレンマがあり、「本来のペースで走ること」=「フルマラソンでの快走率」とはなりません。
たとえば練習までは「35kmまでで大丈夫」という意見が多いです。そしてそこにはほぼ「起伏」のことは書いてありません。
平地の周回コースでキロ4分5秒~10秒で30km走ができても、もしかすれば「起伏」に対応できずにペースを崩すこともあります。要は、「フルマラソンの走り方」と「あらゆるコース」に対応できない走り方になっている危険性があるともいえます。
特にストライドが広く、スピード任せで推進力を得るランナーは、フルマラソンでは多くが「ポジティブスプリット(前半のハーフのペースが速い)」であるケースが多いでしょう。
これは本来の走り方が、ストライドが広く、体の真下で着地していても“着地衝撃が大きすぎる”という走り方になっていることが多いためです。
平地では難なくこなせている設定タイムも、フルマラソン本番になれば気分が高揚し、多少のアップダウンに対して慎重になっていない、あるいはペースが速すぎるという「罠」に陥りがちです。
結論から言えば、フルマラソンでの走り方と日ごろのスピードレースの走り方では、少し意識の違いを変えなければいけないということです。
◆スピードランナーも「忍者走り」への意識を
32という筆者での年齢はともかく、多くの20代ランナーはスピードが速いレース展開を好みがちですよね。
「どうやればゆっくり走ることができるの?」という悩みを持った若いランナーは多いんですが、これは茶化しているわけでもなく“本当にゆっくり走ることができない”んです。
そもそも駅伝からハーフマラソンまでのタイム短縮には「ダイナミックな動きづくり」が練習内容にも含まれることが多いです。
結局、そのダイナミックな動きが身にしみているかぎり、「地面の反発からのエネルギー」と同時に、「地面の反発からのダメージ」も高くなっています。
これを解消するために参考にしたいのが「忍者走り」です。
上下動が少なく、足の回転が速いピッチ走法は、地面からの着地衝撃をうまくロスできています。
【省エネ走法の特徴】
- 肩甲骨はうまく動かせている
- 肩に力が入っていない
- 肘をコンパクトにたたんでいる
- 肩甲骨と体幹、骨盤の連動がスムーズ
- 脚は振り上げずに、前進運動を「全身」で可能にする
- 着地のロスが大幅に少ない
- 肩甲骨と腕振りにより推進力を得る
- 体の捻りが大きい
- 上半身も骨盤も前傾している傾向がある
- 脚の振り上げが大きく、四頭筋からハムの筋力をフル稼働させる
- 着地は真下でも、着地音が大きい
- 大跳び
ただ、筋力や骨格、フォームの癖は十人十色なので、必ずしも「これが正解」という式と答えがないのが、多くのランナーを悩ませている「フルマラソンでの失速」につながるのではないでしょうか。
もちろん練習量も必要ですが、まずは動きという観点から見直すのも大事だと言えそうです。
スピードランナーが多く苦労する「フルマラソンの走り方」は、通称・「忍者走り」での省エネ走法を意識することも、フルマラソンタイム向上のヒントと言えるでしょう。
まとめ
なお、ダイナミックなフォームで着地衝撃がありつつも、フルマラソンを走りきる筋力を身につけるのに有効とされるのが「起伏走」や「下り走」だと筆者は自分に課題を立てていました。
筆者は今は満足に走ることができない体の状態ですが、来期のフルマラソンをすでに見据えているランナーは「オーバーホール」をしつつも、下り走や起伏走を練習で意識してみてはいかがでしょう。
特に、着地衝撃に耐えうる「四頭筋」と「ハムストリングス」では、下りで思い切って走る練習が効果的です。
ただ、下り走ではきちんと「前傾」して、「体の真下で着地する」ということができず、のけぞった姿勢で下ると故障率も高いです。
「忍者走り」の秘訣は、上半身をいかに脱力させて、高速ピッチでいかに推進力を得るために地面からの反発を得ながら、ダメージを殺すということです。
うまく「忍者走り」の良い点も吸収したランニングフォームを作り上げたいですね。
【画像出典】
コメントを残す